上図では、個別のビルの事情やミクロな立地条件を除き、マクロにみた理論賃料の分布を示しました。

 この図は、全く計算で求めたものですが、丸の内はやはり超一等地(ピンクのゾーン)と出ました。しかし、東京駅を中心として、新橋から秋葉原までも超一等地は広がっており、品川、赤坂、上野も飛び地ではありますが、同様に超一等地と格づけされました。これらの地区は、優良な再開発を行えば、超一流のビル街に変身する可能性があります。

 次いで、橙色のゾーンは、一等地ですが、新宿から上野、田町を結ぶトライアングルを構成しています。日暮里も磨けば玉になる立地といえます。

 黄色のゾーンは、これに次ぐ立地と言えましょう。山手線沿いのほとんどの地区がこれに当たると出ました。現在のオフィス立地はほぼこのゾーンまでですが、一部は、黄緑ゾーンにまで拡大しております。今後、オフィス需要が増大してきた場合には、黄緑ゾーンだけでは収容できずに、青色のゾーンにまで拡大していくことが予想されます。これらの地区は、ターミナル駅に入る強力な鉄道沿いに広がっています。21世紀初頭には、これらの地区が脚光を浴びることになるでしょう。

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理論賃料についての解説

理論賃料とは、オフィスの立地コストを定量化してその差分を賃料換算したものです。

     立地コスト=営業コスト+通勤コスト

 立地コスト:本社の集積度に応じて営業に要する時間が異なります。営業先1日3件、時間コスト4,000円として、上場企業本社に対する加重平均アクセス時間を計測したものです。丸の内で低く、郊外になるほど高くなります。

 通勤コスト:東京都心3区に通勤する居住地の代表駅からの加重平均時間について、時間コスト4,000円として、コスト換算したものです。丸の内で低く、次いで山手線、郊外地では高くなります。

 以上から算出された立地コストの差(1ヶ月分)を、オフィスワーカー1人当たり床面積20uとして、月坪換算したものを差額賃料とします。

 これから、理論賃料は、以下の式で求められことになります。

       理論賃料=オフィス立地の限界地点での絶対賃料+差額賃料

 オフィス立地の限界地点とは、それ以遠ではオフィスが立地しない場所のことです。この地点では、競争によって差額地代分はとれません。したがって、ほとんど、建築コスト分が賃料(絶対賃料)となると考えられます。ここでは、

 オフィス建築費坪80万円×金利4%×20u/3.3u÷12カ月=1.6万円/月坪

としました。

 現在のオフィス立地の限界地点は、図中の黄緑色のゾーンと考えられます。

 オフィス立地が拡大して、青色の領域にまで拡大すれば、相対的に丸の内の立地上のメリットは高まり、丸の内の理論賃料は上昇することになります。また、交通機関の整備や本社の立地の変化によっても理論賃料は変化していきます。世界の大都市の中で、ロンドンと並んで東京の賃料は高いのですが、これは、ニューヨークなどと比べて都市構造上極めて利便性が高いことに基づきます。

 なお、ここでの賃料は、計算過程からみるようにグロス面積当たりですが、共有部分の賃料は、共益費として別途徴収すると考えて、ネット賃料(共益費を除く、賃貸面積当たり賃料)とみなしてもよいと考えられます。

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